平成27年度
修士論文審査結果要旨
学籍番号 B3DM1007 氏名 高田 朝
3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法の有用性評価
ロストワックス法による歯科用鋳造は、歯科技工において汎用される金属等の加工技術である。近年、光学印象法やCAD/CAM 法などデジタル・デンティストリー関連の技術革新や実用化の進展が目覚しく、歯科技工現場への導入が進んでいるが、CAD/CAM 法による直接加工に適した歯科用材料は未だ種類に乏しい。このため、CAD/CAM 法により焼却可能な材料を用いて原型を製作し、ロストワックス鋳造法により歯科用合金やキャスタブルセラミックスに置換する手法の実用化が望まれてきた。しかしながら、これまでCAD/CAM 法との併用が試みられた原型材料は、原型の熱消失時の熱膨張による鋳型の型割れや、消失残渣による鋳造体の品位低下などの問題があり、実用に耐えるものではなかった。
本研究は、2官能ウレタンメタクリレートオリゴマー、もしくは2官能メタクリレートオリゴマーに、それぞれ希釈用2官能性メタクリレートモノマーおよび合成用ワックスを添加した2種類の紫外線硬化性樹脂(イタリア、DWSシステムズ社製、RF080およびRF077レジン)を原型材に用いて CAD/CAM 法により原型を製作し、ロストワックス鋳造法により得た鋳造体の寸法精度と表面粗さを、インレーワックスならびにパターン用レジンを原型材に用いて得た鋳造体と比較、検討したものである。2種の光硬化性樹脂材料は、液槽光重合方式の3Dプリンタによる造形用途に開発されたもので、とくに熱消失性の改善が図られている。本研究では、これら樹脂材料と従来からの2種類の原型材で製作した原型(直径1.5mm、高さ10mmの円柱、および縦横5.0mm、高さ1.0mmの直方体)を、3種の埋没材、2種の加熱条件で遠心鋳造し、実習用銅亜鉛合金(GC社、Kメタル)の鋳造体を得ている。また、寸法精度は円柱状原型とその鋳造体の上部および下部の直径の変化に基づいて算出し、表面粗さは直方体原型からの鋳造体表面3箇所の中心線平均粗さと、鋳造体表面の500倍のSEM像の観察に基づいて評価している。
本研究より、2官能ウレタンメタクリレートオリゴマー、希釈用2官能性メタクリレートモノマーおよび合成用ワックスを成分とする原型材(RF080)を液槽光重合方式3Dプリンタ技術にて加工し、専用急速加熱型石膏系埋没材と従来加熱法の条件で鋳造した鋳造体の成績が、寸法変化率1.74%、表面粗さ0.76 μmと、インレーワックス(それぞれ 1.78%、0.76 μm)およびパターン用レジン(1.61%、0.99 μm)に比肩し、臨床上満足できるものであることが明らかとなった。
以上、本研究は CAD/CAM 法による歯科技工技術の進歩に重大な寄与を果たしたと評価される。よって、本論文は修士(歯学)の学位に相応しいものと判断する。
3Dプリンタ技術とロストワックス鋳造法 |
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