アクリルレジン前装鋳造冠 Metal crown with acrylic facing |
レジン前装鋳造冠とは?(What's metal crown with acrylic facing ?)
レジン前装鋳造冠は、歯冠色材料の審美性および鋳造冠の強度を併せ持つ補綴装置である。歯冠色材料としてレジンもしくはコンポジットレジンを使用することにより、天然歯に近い色調を再現することが可能である。また、外観に触れないところを金属にすることにより、咬合力にも耐えうる強度を確保することが可能である。前歯(中切歯、側切歯および犬歯)のレジン前装鋳造冠は、日本で保険が適用される。犬歯から奥のレジン前装鋳造冠は保険が適用されない。
レジン(樹脂)は吸水性があるので、ポーセレン(陶材)と比べると変色しやすく、細菌が付着しやすい。
金銀パラジウム合金が日本では金属部分に用いられている。
使用材料(Materials)
ワックス分離材、インレーワックス、シリコーンコア、ワックス形成器、リテンションビーズ、接着剤、スプルーワックス、石膏系埋没材、リング、ライナー、真空練和機、ファーネス、鋳造機(遠心鋳造機か真空加圧鋳造機)、金銀パラジウム合金(1フレームあたり3~4g程度)、ペーパーコーン、シリコンポイント、バフ、カッティングディスク、 金属プライマー(金属とレジンを接着する材料)、アルミナサンドブラスト、、ピンセット、前装冠用歯冠色レジン(オペーク、インサイザルオペーク、サービカルオペーク、ボディ(デンティン)、インサイザル(エナメル))、光重合機(UVまたはLED)、レーズ、硬毛ブラシ、軟毛ブラシ、バフ、テルキジン。製作方法(Method of fabrication)
1.作業模型を製作する。2.咬合器装着する。
3. 支台歯に分離材を塗布し、歯冠形態を回復する。
4.シリコンパテで歯冠外形のコアを作製する。
5.フィニッシュライン(金属部とレジン部の境目)を設定する。歯科医師と相談して、隣接面と切縁部を、メタルにするか樹脂にするかを決定する。唇側マージン部も、高さ方向に、幅0.3mm程メタルにすることが望ましい。(歯肉縁下マージンでは、歯肉とレジンを接触させない方がよい)
6.フィニッシュライン内側に、接着剤を塗布する。
7.リテンションビーズをふりかける。(接着剤に埋もれないように注意する。)
8 .接着剤が乾いたら、スプルーワックスを焼つける。
9.石膏系埋没材で埋没する。
10.リングを加熱して、金銀パラジウム合金を鋳造する。
11.割り出して、スプルーカットを行い、 フレームを茶色のシリコンポイントの粗さまで研磨する。フレームのレジンとの接触面は、アルミナサンドブラストで表面を荒らす。(機械的接合の向上を目的とする)
12. フレームを超音波洗浄する。(切削くずと油分を取り除く)
13.フレームの、レジンとの接触面に金属プライマーを塗布する。
14.ペースト状のオペークレジンを、アンダーカット部までしっかり満たし、金属色が隠れるようにに盛ったあと、光重合機で重合する。(重合時間はメーカー指定)
15.必要に応じて、サービカルオペーク、インサイザルオペークを使用して、色調に変化をもたせる。
16.ボディレジンを築盛する。(シリコンコアで形態を確認しながら作業する。また、エナメル部のレジンを盛る間隙を確認する)
17.エナメルレジンを築盛する。
18.最終重合を行い、バーで形態修正を行う。
19.鏡面研磨を行い、完成。
考察(Discussion)
1.作業模型について
今回は、副歯型法で作業した。印象のマージンが鮮明であり、シリコン印象採得を行った場合は、この副歯型法が適用できる。副歯型法は、分割歯列模型と比較して、マージンフィットと各歯の位置関係が正確であることが 知られているものの、現在、ほとんど使用されていないのが現状である。2.擬似歯肉について
今回、擬似歯肉を製作して、歯肉の情報を技工物製作に利用した。擬似歯肉があることで、技工物のエマージェンスプロファイルを(マージン部の立ち上がり)を理想的なカントゥア(オーバーカントゥアになることを防止する)で製作することが可能となる。擬似歯肉の製作方法は下記の手順である。
1.支台歯の歯肉部に分離材(ワセリンかシリコンオイル)を塗布する。
2.シリンジ(注射器のようなもの)にレギュラータイプのシリコンをいれて、歯肉部にシリコンペーストを注入する。
3.超硬質石膏を印象に注入して完成。
3.フィニッシュラインの設定について
本症例は、審美性を重視して、隣接面と切縁部はレジンタッチになるように、マージン部は0.3mm程カラーを設定した。教科書的には、交合する部位と隣接面はメタルタッチにすることが原則とされているが、近年、各企業で硬質レジンの改良がなされており、レジンの機械的性質が向上しているといわれているため、メタルタッチにはしなかった。メタルタッチにすると、隣接面部と切縁部のレジンの盛る量が必ず少なくなるので、オペークが浮き出たような、単色で深みのない前装冠ができる(インサイザルオペークなどでキャラクラライズすれば多少は審美性が良くなるが)。レジンタッチにすることで、天然歯に近い色調にすることが可能となる反面、隣接面がメタルと比べて摩耗しやすくなること、咬合するところはチッピングが生じやすくなるといった欠点もあることも理解しておく必要がある。4.レジン築盛について
オペーク、ボディ、エナメルの3種のレジンを盛って、重合するのが製作の基本であるが、色調を天然歯に近づけるために、それぞれ適切な厚みで盛ることができるようになるためには長い年月を要する。経験の浅い歯科技工士でも、天然歯に近い前装冠を作れるようにするためには、ワックスアップ時にシリコンコアを製作して、このコアを参考にレジンの盛る量を可視化することで、熟練を要せずにレジンを築盛できるようになると考えられる。5.3Dプリンタ技術(付加製造技術)を利用した、メタルフレームの製作について
液槽光重合方式あるいはインクジェット方式の3Dプリンタでフレームのレジンパターンを造形して、ロストワックス法で金銀パラジウム製のフレームを作ることが可能である。センサブル社(現3Dシステムズ社)の3Dデザインソフトで、歯冠形態の回復、フィニッシュラインの 設計、カットバック(窓開け)、リテンションビーズ(維持部)の設計が、画面上で行えるようになった。現時点では、製作制度の検証がなされていない。
結語(Conclusion)
今回、副歯型法、擬似歯肉製作、シリコンコア法を併用することで、口腔内でほぼ無調整で技工物がセットされただけでなく、審美性もよい前装鋳造冠を制作することができた。参考文献(Reference)
石橋寛二,伊藤裕,川和忠治,寺田義博,福島俊二,三浦宏之.クラウンブリッジテクニック.医歯薬出版 2008;1:123~130.関連リンク(Related links)
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