2015年9月10日木曜日

メタルコア Metal core/ Stumpfaufbau

メタルコア Metal core

メタルコアとは? (What's Metal core ?)

 金属製の支台築造のことをいう。
 歯冠部の歯質欠損や歯内療法処置などにより、歯冠部歯質の形成のみでは適切な支台歯形態が得られない場合、その不足分を人工的材料で築造することを、支台築造という。
 中でも、鋳造支台築造は、歯髄腔や根管に保持を求めて支台歯形態を回復する方法で、支台歯の印象採得を行い、作業模型を使用して製作する。鋳造支台築造用の金属には、金合金、金銀パラジウム合金、銀合金がある。
 この、鋳造による支台築造法の特徴には以下の事項が挙げられる。
 ① 歯冠崩壊の著しい歯でも、鋳造支台築造後、フルキャストクラウンが装着できる。
 ② 脆弱な残存歯質を保護することができる。
 ③ 支台歯形態の改善により、クラウンの保持力が増大する。
 ④ 支台歯形態の単純化により、クラウンの適合性を高めることができる。
 ⑤ 歯冠軸の改善ができ、ブリッジの支台装置の着脱方向の調整にも応用できる。
 ⑥ クラウン再製作時の処置が簡便化できる。
 ⑦ クラウンの厚さの均等化が図れる。

使用材料(Materials) 

 モデルトリマー、超硬質石膏、普通石膏、ダイロックトレー、ユニティー咬合器、石膏分割のこぎり、ワセリン、ラウンドバー、ワックス分離材、インレーワックスソフト(棒状)、ラボシリコーンパテ、スプルーワックス、円錐台、厚さ0.7mmのキャスティングライナー、ステンレスリング、真空練和機、ファーネス、石膏系埋没材、遠心鋳造機、マッチ、ガスブローパイプ、低融点用フラックス、歯科用銀合金(メタルコア用)、カッティングディスク、カーバイドバー、ペーパーコーン、茶色のシリコーンポイント。

製作方法(Method of fabrication)

 1.歯列模型基底面を咬合平面と平行になるようにかつ厚さを7~10cmになるようにモデルトリマーで削除する。
 2.基底面に維持孔を形成する。
 3. 大ロックトレーに超硬質石膏を適正混水比で練和、注入し、歯列模型をその上にセットする。
 4.超硬質石膏が硬化したら、作業模型を咬合器装着する。
 5.各支台歯を石膏分割のこぎりで分割する。
 6.マージントリミングを行う。
 7. 支台歯にワックス分離材を塗布する。
 8.軟化圧接法で、ポスト部を形成する。
根管の奥までワックスを圧接するコツは、まず支台歯の外形より大きなワックスブロックを作製する。次に、外側から約2~3ミリ硬い部分を作り、ワックスブロックの中央部を熱したワックスインスツルメントで加熱する。(液状で良い)そして、加熱部表面が暗く曇った色になったタイミングで、軟化したワックスを圧入させる。
 9.ポスト部ができたら、歯冠外形をワックスアップで作製する。
 10.歯冠外形を記録する為に、シリコーンパテで外形のコアを作製する。
 11.パテを参考に、クラウンの厚みが均一になるように、かつ軸面テーパーが2~8°になるように、歯冠部ワックスを削除していく。そして、可能な限り単純な支台歯形態に形成する。
 12.ワックスアップが完了したら、ワックスコアの咬合面部に太く短いスプルーワックスを植立する。
 13.円錐台にワックスパターンをたてて、ステンレスリング内側にキャスティングライナーを1枚巻きつける。
 14.石膏系埋没材で埋没する(標準混水比)
 15.メーカー指定に従い、鋳型を作製する(ロストワックス法)
 16.指定された金属を鋳造する。
 17.鋳型が冷えたら、鋳造体を割り出す。
 18.スプルーカット後、真っ直ぐなバーで携帯修正後、茶色のシリコンポイントの粗さまで研磨して完成。

シリコンコアでクリアランスを確認する

メタルコア完成

 

考察(Discussion)

1.作業模型について

 支台築造のみ製作する場合、歯列模型の位置関係の精度はあまり要求されない。そのため、今回はダイロックトレーを用いた分割歯列模型を製作した。なるべく位置関係が正確な作業模型で製作したいので、トレーの中には、超硬質石膏を使用した。また、トレー内面に石膏くずやワックスなどのゴミが付着すると、位置関係の精度が著しく悪くなるため、ゴミがつかないよう、慎重に作業した。
 ダイロックトレーを使用した分割歯列模型は、ダウエルピンを使用した分割歯列模型を製作するより、若干作業時間が短くすることが可能である。また、ダウエルピン植立のための穴を空けるとき、ポスト部に貫通する心配がない点が利点である。

2.ワックスアップについて

 ポスト部をワックスアップする方法はいくつか考えられる。ひとつは今回利用した、軟化圧接法である。この方法は、センスと熟練が必要であり、この手法を利用できる歯科技工士は現在ほとんど存在しないと推察される。もう一つは、とかしたワックスをポスト部に流し込み、その後流し込んだワックスを加熱して液状にしたあと、直ちに樹脂や金属の棒を差し込んでポスト部のワックスを着脱できるようにする方法がある。こちらのほうが手法としては簡便だが、ワックスをポストの奥まで流し込みにくいこと、気泡が混入すること、ポスト部のワックスが取り外しにくいことなどの欠点がある。そのほかの方法として、パターンレジンをポスト部に流し込む方法などがあるが、ポスト部にアンダーカットが存在した場合、パターンの取り外しが困難であるため、あまり利用することができない。
 支台歯部は、一度歯冠外形をワックスアップした後、シリコンコアを作製して、クリアランスを確認して製作したほうが、前装冠のクリアランスを考慮した支台築造体が製作できると考えられる。シリコンコアがないと、支台築造の上につくるクラウンの厚みが不均一になること、歯軸がずれることなどのテクニカルエラーが生じやすくなると推察される。このエラーのうち、歯軸がずれることは、作業模型を並行模型にしていない場合も同様に生じやすい。

3.鋳造について

 今回、歯科用低融点銀合金を使用した。これは、融点が600℃程度のため、金銀パラジウム合金とは鋳造プロセスが異なる。 金銀パラジウム合金を鋳造する際は、700度に加熱した鋳型が赤い状態の時に鋳造するのに対して、歯科用低融点銀合金を鋳造する際は、700度に加熱した鋳型を、マッチを鋳型に触れて着火しない程度の温度まで放冷してから、金属を溶解し鋳造する必要がある。また、フラックスも専用の低融点タイプのフラックスを使用する必要がある。低融点銀合金を加熱融解するときも、フラックス添加後、合金が丸まってから約3~4秒加熱を止めてから遠心鋳造することが必要である。

4.3Dプリンタを利用したメタルコアの製作について

 液槽光重合方式およびインクジェット方式の3Dプリンタ技術を利用して、熱消失性に優れる樹脂製の支台築造原型を造形すれば、ロストワックス鋳造法を併用することで、既存の歯科用合金製の支台築造体が製作可能となる。模型に対する適合精度などは、今後検証していく必要がある。

結語(Conclusion) 

  シリコンコア法による理想的な支台築造形成、軟化圧接法によるポスト部の形成、そして低融点合金の特殊な鋳造技術を駆使して、高精度、高品質のメタルコアを製作することができた。

参考文献(Reference)

石橋寛二,伊藤裕,川和忠治,寺田義博,福島俊二,三浦宏之.クラウンブリッジテクニック.医歯薬出版 2008;1:39~44.  

関連リンク(Related links)

歯型彫刻と歯列模型製作
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