2015年9月29日火曜日

レジンクラウン(CAD/CAMミリング法)とCAD/CAM 冠の治療指針 Resin crown by CAD/CAM milling Hard resin jacket krone von CAD / CAM-Fräsen

CAD/CAMミリング法で製作中のレジンクラウン

 CAD/CAMレジンクラウンとは?(What's resin crown by CAD/CAM resin crown ?)

 CAD/CAMミリング法でコンポジットレジンブロックを切削して製作したレジンクラウンである。平成26年度より、小臼歯部で保険適用となった。CAD上でデジタルワックスアップを行いCAD用データを製作し、CAD機にそのデータを送り、切削加工する。レジンの他に、セラミックス、金属(Co-Cr, Ti)、木などが市販されている。

保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針(引用)

公益社団法人日本補綴歯科学会医療問題検討委員会が作成した。

1.はじめに
平成26年度の療報酬改定により、歯科用CAD/CAM装置を用い、均質性及び表面性状を向上させたハイブリッドレジンブロックから削り出された小臼歯部の歯冠補綴
であるCAD/CAM冠が保険導入された。このCAD/CAM冠には、これまでの補綴とは異なる対応が求められるが、その適切な術式については周知されていない。そこで、(公社)日本補綴歯科学会は、保険診療におけるCAD/CAM冠の診療指針を作成することとした。

2.保険診療におけるCAD/CAM冠について
1)CAD/CAM冠の定義CAD(Computer-Aided Design)はコンピュータ支援による設計、CAM(Computer-Aided Manufacturing)はコンピュータ支援による加工・製作のことで、CAD/CAM冠は、歯科用CAD/CAMシステムを用いてCAD/CAM冠の設計を行った後、製造機械と連結して、CAD/CAM冠の加工・製作を行った補綴装置を指し、保険診療においてはCAD/CAM冠用材料との互換性が制限されない歯科用CAD/CAM装置を用いて、作業用模型で間接法により製作された歯冠補綴装置をいう。

2)CAD/CAM冠の施設基準
CAD/CAM冠の施設基準は次の通りであるが、歯科用CAD/CAM装置が保険医療機関内にある場合は、保険医療機関に歯科技工士が配置されている必要があるので、この点については留意が必要である。
【CAD/CAM冠に関する施設基準】
(1)歯科補綴治療に係る専門の知識および3年以上の経験を有する歯科医師が1名以上配置されていること。
(2)保険医療機関内に歯科技工士が配置されていること。なお、歯科技工士を配置していない場合は、歯科技工所との連携が図られていること。
(3)保険医療機関内に歯科用CAD/CAM装置が設置されていること。なお、保険医療機関内に設置されていない場合は、当該装置を設置している歯科技工所との連携が図られていること。

3)CAD/CAM冠用材料の定義
保険診療においては、CAD/CAM冠に使用できる材料は規定されており、次の定義を満たすものに限定されている。
【CAD/CAM冠用材料の定義】
次のいずれにも該当すること。
(1)薬事法承認又は認証上、類別が「歯科材料
(2)歯冠材料」であって、一般的名称が「歯科切削加工用レジン材料」であること。
(2)シリカ微粉末とそれを除いた無機質フィラーの2種類のフィラーの合計が60%以上であり、重合開始剤として過酸化物を用いた加熱重合により作製されたレジンブロックであること。
(3)1歯相当分の規格であり、複数歯分の製作ができないこと。
(4)CAD/CAM冠に用いられる材料であること。

4)CAD/CAM装置
CAD/CAM冠用材料との互換性が制限されない歯科用CAD/CAM装置を用いることとなっており、複数企業のCAD/CAM冠用材料に対応できる装置を指す。なお、CAD/CAM冠用材料装着部の変更又は加工プログラムの改修(追加、変更)により、複数企業のCAD/CAM冠用材料に対応できる装置も対応となる。

5)適応症
適応症は、全部被覆冠と同様であり、維持力に十分な歯冠高径があること、過度な咬合圧が加わらないこと等が求められる。適応可能な症例については、個別具体的に判断することとなるが、適応症、推奨できない症例、考慮すべき事項は以下の通りとなる。また、部分床義歯の支台歯、事実上の最後臼歯については、適応症とするためのエビデンスが得られていないため、当面は慎重に適用を検討すべきである。なお、後継永久歯がない乳臼歯に対して、必要があって製作する場合のCAD/CAM冠については、維持力に十分な歯冠高径があること、過度な咬合圧が加わらないこと等から歯科医学的に適切であると判断された場合には適用が可能であると考えられる。

(1)適応症・小臼歯の単冠症例
(2)推奨できない症例・咬合面クリアランスが確保できない症例・過小な支台歯高径症例・顕著な咬耗(ブラキシズム)症例
(3)考慮すべき事項・部分床義歯の支台歯・事実上の最後臼歯(後方歯の欠損)・高度な審美性の要望

3.CAD/CAM冠の製作

1)支台歯形成
適切なクリアランス、滑沢かつ単純な形態、丸みをもたせた凸隅角部、円滑で明確なマージン形態とフィニッシュラインが求められる。
(1)咬合面・約1mmのガイドグルーブを付与する。・頬側、舌側内斜面ともに、咬頭傾斜に沿ってガイドグルーブが平らになるように切削し、なめらかな逆屋根形状にする。
・クリアランスは、1.5~2.0mm以上にする。
(2)頬側面・舌側面
・頬側面は咬頭側と歯頸側それぞれに咬合面と同様1mm弱のガイドグルーブを付与し、2面形成する。
・軸面テーパーは片面6~10°の範囲におさめる。
・舌側も頬側と同様に形成する。
(3)隣接面
・隣接歯を傷つけないことが重要であり、隣接面に歯質が一層残るように軽くバーを通すイメージで形成する。
・両隣接面のテーパーも片面6~10°の範囲におさめる。
(4)軸面・マージン部
・概形成ができたら、続けて支台歯全周の辺縁形態をディープシャンファーに修正する。
・フィニッシュラインが鋸歯状とならないよう特に滑らかに仕上げることが大切である。
・舌側面も頬側面と同様に修正する。
・クリアランスは、軸面で1.5mm以上、マージン部で約1.0mmにする。
(5)隅角部
・咬合面―軸面部に鋭角な部分がないように丸みを帯びた形状にする
(6)削除量の確認
・あらかじめ作製したシリコーンインデックスなどで削除量を確認する。

2)印象・咬合採得
・歯肉圧排操作を確実に行い、フィニッシュラインを明示する。
・シリコーンゴム印象材と咬合採得用シリコーンゴムによる印象・咬合採得が望ましい。

3)調整・研磨
(1)隣接面のコンタクト強さは、コンタクトゲージを用いて確認し、コンタクトが強い場合は咬合紙でマーキングして調整する。
(2)CAD/CAM冠を試適し、マージン部の適合を確認(視診、探針)する。
(3)咬頭嵌合位および側方運動の咬合接触点を確認し、咬合調整を行う。
(4)研磨は、口腔外でセラミックス材料と同様のステップで行う。

4)装着歯質とCAD/CAM冠の一体化を図るため、接着性レジンセメントを使用することが必須である。

(1)口腔内試適後、CAD/CAM冠内面を弱圧下でアルミナサンドブラスト処理することが推奨される。
(2)超音波洗浄やリン酸エッチング処理などでCAD/CAM冠内面を清掃し、乾燥後にシランカップリング剤含有プライマーを塗布する(シラン処理)。
(3)乾燥後に接着性レジンセメントをCAD/CAM冠内面に塗布して装着する。
(4)余剰セメントに数秒間光照射(セメントの種類により異なる)を行い、接着性レジンセメントを半硬化させた後、除去する。なお、セメントの種類によっては、歯面処理が必要である。

4.その他
1)CAD/CAM冠の管理について
・物品(食品・工業製品など)の生産・流通履歴管理により、物品の流通経路を生産段階から消費段階まで追跡が可能な状態のことをトレーサビリティtraceability)といい、CAD/CAM冠を含む歯科技工全般について追跡・調査が可能な状態としておくことが望まれている。
・CAD/CAM冠の材料にLOT番号が記載されているシールが用意されている場合、これを保管することが望ましい。

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