2015年11月21日土曜日

口腔顔面技工のまとめ Summary of oral and maxillofacial rehabilitation technology

中空型顎義歯


口腔顔面技工装置の目的


1、欠損または開口部の栓塞(口腔や鼻腔の感染や乾燥の防止)

2、発音、言語機能の回復

3、咀嚼機能の回復

4、審美性の回復

5、放射線治療補助(放射線治療時に正常組織の保護や治療における正確な位置決め)

6、外科的治療補助(骨折や脱臼の治療の際の固定や、移植皮膚の保持、形成手術後

に患部の軟組織の形態を保つ)

プロテーゼ・エピテーゼ材料


1、材料の要件


生体に対して物理的・化学的・生物学的に安定であること。

2、シリコーン材料


エピテーゼ材料で最も広く使われている材料が、シリコーンエラストマーである。

特性は、以下の通りである。

①温度変化に安定で、消毒が容易にできる。

②化学的・物理的に安定で、時間の経過で変形しない。

③形を作りやすい。

④生体に癒着や粘着を起こさない。

⑤生体との組織反応が少ない。

⑥毒性が少なく、発癌性に関しても臨床的に問題がない。

エピテーゼ技工で用いるのはRTV型(Room Temperature Vulcanizing)のものである。

(室温で加硫するもの)

RTV型のシリコーンは、専用の顔料を混ぜることで着色が可能であり、色の安定性が良

く、生物学的に無害で、広い温度範囲の中でもその化学的・物理的安定性を損なわない。また、加熱することによって加硫時間を短縮することができ、石膏埋没法により、湿式・乾式どちらでも同じような結果が得られる。

3、顔料


ベースとなるシリコーンエラストマーは半透明、もしくは乳白色であり、用途に応じて使い分ける。一般的に有色人種の色調を再現するには、半透明のタイプを用いる。

顔料は内部着色用と外部着色用に分けられる。内部着色法とは、シリコーンベースに各色の顔料を混ぜ込んで周辺皮膚色に合わせていく方法であり、経時的な色調の変化は少ない。外部着色法とは、ベース色をいったん加硫後、表面に外部着色材でペイントする方法である。取り外しの際の摩擦や手脂などにより、部分的な色褪せを生じる。

4、接着剤


シリコーン系接着剤を選択する。(ウレタン系の接着剤が使用できない。)

補綴系装置の種類


1、顎義歯(無歯顎)


目的

先天性形成不全及び、腫瘍、炎症あるいは外傷などが原因で、顎堤及び口蓋に生じた欠損腔を補い、摂食、嚥下、咀嚼、発音などの口腔機能の改善を図ること。

構成

欠損部を塞ぐ栓塞部と、義歯部とで構成される。

形態と材料による工夫

顎義歯の維持安定には、栓塞子の形態に加え、重量の軽減もまた重要なことである。(顎義歯の重量が20gを超えると維持が悪化すると言われる。)

軽量化の方法として、通常は栓塞子の形態を中空型か天蓋開放型にする。

他には、インプラントや根面アタッチメントにマグネットを併用する方法や、軟性材料、弾性シリコーンを顎義歯の下部に使用しアンダーカットを積極的に使用する方法もある。

2、顎義歯(有歯顎)


顎欠損補綴(有歯顎)

有歯顎における顎義歯の症例は、通常の歯牙および歯槽堤などの欠損に対する一般補綴とは異なる。特に、悪性腫瘍の進展例の手術では、上顎骨・下顎骨に加え、舌・粘膜などの軟組織も切除せざるを得ない場合が多く、治療後は欠損による咀嚼障害、発音障害、嚥下障害などの生理学的機能障害や、さらに審美障害などが複合的に出現する。

上顎顎義歯(有歯顎)

上顎顎義歯製作上の臨床的要件

①顎義歯の軽量化

②口腔軟組織欠損部と顎義歯栓塞部の辺縁封鎖(発音と嚥下に関係)

③顎義歯の栓塞部表面の滑沢性(粘膜を傷つけないことと、自浄性の向上)

④耐久性

中空型と天蓋開放型の特徴(栓塞部)

中空型…義歯の軽量化が図れる。

栓塞子の製作工程が複雑である。

中空部に浸水液が貯留し、雑菌繁殖の原因となる。

天蓋開放型…栓塞部上部が開いているため重量の軽減が確実に図れる。

欠損部周囲や鼻腔からの分泌物や水分などが凹部に溜まりやすい。

発音時の音のひずみや共鳴などを起こすことがある。

下顎顎義歯(有歯顎)

下顎有歯顎症例は、上顎に比べ、床面積が小さく顎の偏位などが起こりやすいため、残存歯への維持の負担は大きくなる。また、骨再建方法や外科的侵襲・放射線照射などの影響のために、咀嚼機能や舌機能などに複雑な機能障害が起こる症例では、どのような処置が取られたか知る必要がある。

顎義歯と残存歯

有歯顎の顎義歯は、無歯顎症例と比較すると、残存歯に維持を求めることが出来ることから安定性が良い。また、残存歯の歯周疾患の定期的な予防処置が重要である。

3、Hotz型口蓋床


口唇口蓋裂の患児は、哺乳に際し、口腔の陰圧状態を作り出すことができず、母乳の乳

首あるいは哺乳瓶の乳首からの吸引が難しいとされている。

Hotz型口蓋床は、哺乳床とも呼ばれる口蓋床である。Hotz型口蓋床を使う目的として、

①顎の正常な成長を促進

②口腔と鼻腔との交通を遮断(陰圧形成を助け、母乳あるいは調合乳の吸引効率を向上、母乳あるいは調合乳の吸引効率を向上、母乳あるいは調合乳の鼻腔への喪失を防止、嚥下機能の改善)

③舌の異常運動の抑制

などが挙げられる。

Hotz型口蓋床の機能

①口蓋の開いている部分を塞いで哺乳・食事を助ける

患児の生後直後から口蓋形成術を行うまでの間、Hotz床の装着による哺乳速度の上昇、哺乳障害の著しい改善の報告もあり、その役割は大きい。

②ゴム乳首による潰瘍形成の予防

患児では哺乳の際、人工乳首が口内に露出した鼻の粘膜に接触し、潰瘍を形成しやすくなる。Hotz床を装着すると、潰瘍形成を防ぐことができる。

③発音方法の獲得の補助

舌が鼻腔に入り込む癖を抑えて、舌機能の正常化を図ることができる。

④顎の成長の誘導

Hotz床を装着することによって上顎の発育方向を誘導し、より良い形の上顎を作ることができる。

4、NAMプレート(naso alveolar molding)


片側性口唇口蓋裂患者の外鼻は、患側の鼻翼の扁平化、鼻翼基部の下外方へ偏位や鼻柱の傾斜などの変形をきたしている。このため、初回口唇形成術の際、外鼻変形をどのように修復するかが重要な問題となる。しかし、口唇形成術と同時に行う外鼻形成が尾翼軟骨の発育に与える影響については、未だ結論が出ておらず、乳幼児期に外鼻に外科的侵襲を加えることには賛否両論である。そこで、外鼻に対する形成術を安全に施行できるまでの間は、外鼻矯正装置付口蓋床を用いて、外鼻の形態修正が図られる。

NAMプレートの機能

口蓋を封鎖することと、外鼻の形態を術前に矯正的に修正することである。

5、エピテーゼ(顔面補綴装置)


目的

腫瘍摘出や外傷などによって顔面欠損を生じた場合、エピテーゼで補填することで精神的ダメージを軽減させ、社会復帰を可能とすること。

エピテーゼとは

生体表面に装着する装具であり、顔面の部位に限定されず、手指なども含まれる。

エピテーゼの維持

欠損部のアンダーカット、眼鏡、ヘアバンド、接着剤、顔面インプラントを用いてエピテーゼの維持を図る。

眼窩エピテーゼ

眼窩を含む広範囲の欠損では、顔面欠損部が口腔内と交通している場合と交通していない場合がある。

口腔内と交通している場合は、口腔内の欠損部位を顎義歯で補填して、顔面欠損部をエピテーゼにて封鎖することで、構音機能の回復を行うことができる。

眼窩エピテーゼは、義眼、睫毛、眉毛がエピテーゼ本体に含まれるため、他のエピテーゼよりも製作工程が複雑になる。義眼の角度は表情に重要な影響を与えるため、配置には注意が必要である。また、エピテーゼが顔貌の正面に装着されるため、特に顔貌の対称性と審美性が要求される。

眼窩エピテーゼ装着時のカモフラージュとして、眼鏡などを使用する場合もある。この眼鏡フレームでエピテーゼの辺縁を隠すことも行われる。

エピテーゼのメインテナンス

エピテーゼはシリコーンで製作するため、レジンで製作する義歯と比べ、耐久性がない。また、いろいろな化学物質により、汚染され変色しやすいため、手入れにも注意が必要である。

洗浄の際は、すすぎ洗いをする。洗浄剤を使う必要がある場合は、石鹸もしくは植物系洗剤を使う。擦って洗浄したり、石油系洗剤を使ってはいけない。擦ると外部着色が剥がれたり眉毛、睫毛が切れてしまう。また、石油系洗剤によって、シリコーンが汚染される可能性がある。

接着剤を使用した場合は、古い接着剤をシリコーンから剥離し、新たに接着剤を薄く塗布して使用する。エピテーゼの辺縁は薄く、切れやすいので接着剤の剥離には注意する。

エピテーゼの装着の必要性がない場合は外しておく。エピテーゼを常時装着しているとエピテーゼ内面が常に蒸れた状態になるため、カビの発生を招く恐れがある。カビの発生を防ぐには、内面を定期的に乾かすようにする。

耳介エピテーゼ

耳の欠損に対して作られた人工的な耳介を、耳介エピテーゼと呼んでいる。耳介は、顔の構成要素の中で左右に突き出た部分のため、片方の耳を失うだけでも顔の左右のバランスをとることができず、審美的あるいは心理的な障害を負うことになる。

耳介エピテーゼは、シリコーンによって作られるのがほとんどである。

耳介エピテーゼの維持方法は、接着剤や組織のアンダーカットを用いるものがある。他には、インプラントを耳介周囲に埋め込んで、それを維持とする方法がある。

6、ソマトプロテーゼ


ソマトプロテーゼとは、血行障害、腫瘍、感染症、外傷、先天奇形、神経性疾患などの原因により、四肢・体幹部の一部に生じた欠損に人工物などを用いて、形態や機能を回復する補綴物のことである。これは、四肢・体幹部の装具とは区別される。

治療装置(装具)の種類


1、顎骨骨折固定用装具(副子)


顎骨骨折の治療と固定用副子の関わり

顎骨骨折の治療には、手術を伴う観血的治療と保存的治療(非観血的治療)があり、骨の状態や骨折箇所、また受傷後の期間、残存歯の状態など、それぞれの症例に応じて選択される。いずれの治療法が選択された場合にも固定用副子は必須である。

1)線副子固定法

歯牙を固定源とした固定法で、有歯顎の症例に用いられる。顎骨骨折治療に最も頻用される方法である。一般的に既製の線副子を加工して用いられる場合が多く、これを金属線で歯牙に結紮し顎間固定を行い、骨片の整復や安定を図るものである。

新鮮な単発骨折で偏位が軽度な場合は、ゴムバンドによる牽引と金属線による固定を使った保存的治療が有効な方法である。また、観血的に固定術を行う際にも線副子が使用される。すなわち、骨片を整復後に線副子を用いて顎間固定を行い、術中に咬合関係の回復を確認するために必要である。また、有歯部に骨折線がある時には、術後顎間固定を行わない場合でも固定の補助として線副子が用いられる。

製作は、線副子を歯列の唇・頬側歯頚部に合わせて屈曲成形する。この場合、各歯牙を移動させるような応力が加わらないように、できるだけ均一に歯牙と接触するように心がける。

有歯部に骨折線がある場合にはセットアップモデル上で製作することが多く、症例によっては、部分的な補強を施す場合や、レジンのブロックを添加することもある。

2)床副子固定法

歯牙を固定することが困難な場合、つまり歯牙欠損が多い場合や、小児の下顎骨骨折の整復固定の際には床副子が用いられる。

床副子は、上顎骨あるいは下顎骨と一体になるよう固定したうえで顎内固定や顎間固定を行うため、上顎は牽架固定法(頬骨前頭突起や梨状口下縁を固定源に金属線を用いて床副子を牽引固定する方法)、下顎は囲ぎょう結紮法(床副子を顎骨に金属線で結紮する方法)と併用することが多い。

成人における床副子の製作法は、義歯の作製に準じ、形状はアクリリックレジンでできた咬合床様のものとなる。

2、嚢胞開窓用栓塞子


栓塞子の目的

嚢胞開窓術では術後、開窓部の周囲組織の増生によって開窓口が縮小化し、癒着あるいは閉鎖することがある。嚢胞開窓用栓塞子は、手術によって生じた副腔が骨の再生により縮小化するまでの間、腔内を清潔に保ち、開窓部の閉鎖防止を目的とする装置である。他に、ガーゼの保持、嚢胞腔内への異物侵入防止などの包帯の機能ももつ。

部位による栓塞子の形態

1)前歯部

一部が腔内に入り腔外に庇がつくボタン型栓塞子が適している。

2)下顎臼歯部

小臼歯部や第一大臼歯部の場合は、維持や安定を得やすいので、ボタン型栓塞子が適応できる。

嚢胞が大きく抜歯せざるを得ないことがある。その場合、歯槽堤の開窓部に栓塞子を付けた義歯兼用栓塞子を使用することもある。

3、外科用床副子


目的と機能

外科用床副子(サージカルスプリント、止血シーネ)は、術後の創面の感染予防や止血を目的とする装置である。すなわち、軟膏ガーゼなどを覆って支持・保定し、出血や浮腫を防ぎ、創面を保護する。

4、外科用栓塞子


目的と機能

外科用栓塞子(サージカルオブチュレータ)は主に上顎に用い、上顎骨欠損症例における口腔と鼻腔の交通を遮断し、発音障害と経口摂取を改善するのが目的である。

創面の治癒までの間、欠損部を塞ぎ摂食、嚥下を補助するという機能を持つ。さらに、固有口腔形態を回復し、審美性の回復と構音障害の改善を図ることができる。

構成

止血用床副子と栓塞子で構成される。

5、咬合滑面板


口腔腫瘍の治療において、下顎骨を切り離す手術は稀ではない。連続性を失った下顎は、切除側へ偏位し対向した上顎歯とかみ合わない。このような場合、咬合滑面板で偏位した下顎を誘導し、かみ合わせを改善することができる。

下顎を誘導する咬合滑面板

咬合滑面板は、非切除側上顎に装着し、離断術によって偏位した下顎を対向する上顎に誘導する。咬合滑面板を装着すると、下顎は閉口時に上顎の口蓋側に突き出た斜面板に接触し、その斜面に沿って正しい位置に誘導される。開閉口練習により、筋組織に刺激を与え、下顎運動をさらに改善できる。

構成

維持装置のついた口蓋床とその非切除側舌側につけた斜面板で構成される。

6、舌接触補助床(PAP)


舌接触補助床(palatal augmentation prosthesis)とは、口蓋部に厚みをもたせた口蓋床である。本装置は、舌が機能しなくなった場合に舌の代替装置として使用される。

目的

舌が口蓋に接触できない口腔内の空間を埋めて、再び適切な接触圧を形成し、発音と円下の機能を回復させることを目的とする。

7、顎関節症に対するスプリント


顎関節症とは、顎関節の疼痛、開口障害、咀嚼筋の疼痛、関節雑音、顎運動異常などの症候を呈する疾患群の総括的診断名である。

この治療の主体となるのはスプリント療法や薬物療法などの非観血的治療である。

スプリントの種類

1)スタビライゼーションスプリント

全歯列型スプリント、全歯接触型スプリントとも呼ばれる。これは、咬合の安定化、咬合接触の均等化などを目的とする。

咬頭干渉、早期接触を除去する程度の咬合挙上、筋緊張の緩和、顎側方誘導面の設定などが可能となる。

2)咬合挙上型スプリント

臼歯部の喪失、不良補綴物などのために咬合高径の減少した症例や、ブラキシズムなどで筋性の疼痛が強い症例に使用する。

挙上量が大きすぎると下顎頭の後方転位をきたし、顎関節部の疼痛、側頭部の頭痛、耳鼻咽喉症状を引き起こすことがある。

3)下顎整位型スプリント

下顎頭偏位の整復に用いられ、顎関節の位置の正常化を目指す。

4)ピポットスプリント

下顎頭の位置を咬筋、側頭筋の筋力を利用して引き下げ、関節スペースの増加を目指すスプリントである。クローズドロック症例に使用されロックの解除を目標とし、解除後は速やかに前述の3種のスプリントのいずれかに修正する。最後臼歯部に点状の接触をさせ、それ以外の歯牙は一切接触させない。

5)リラクゼーションスプリント

上顎前歯部に装着するスプリントで、閉口時は前歯部のみ接触し臼歯部は離開する。強い咬合力を除去するのが目的で、ブラキシズムが強く、筋性の疼痛が認められる症例に使用する。

8、スピーチエイド


口蓋裂は、口蓋形成手術によって閉鎖することができる。しかし術後も、鼻咽腔閉鎖が不十分で呼気が鼻に漏れ、構音が不明瞭となる言語障害が見られることがある。そのような場合に治療法の一つとしてスピーチエイドを使用する言語治療が行われる。

目的

鼻咽口腔閉鎖運動時に残存している閉鎖不全の開放部を塞ぐことによって、鼻咽腔の閉鎖機能を果たそうとするものである。

構成

装置自体を維持保定する硬口蓋部(維持床)→レジン床や金属床とクラスプ

維持床を鼻咽腔部分に連結する軟口蓋部(連結子)→約1,0mm径の金属線

鼻咽腔を閉鎖するバルブ→レジン

装着とバルブの調節

バルブは装着後も鼻咽腔の変化に応じてその大きさを変える必要がある。例えば、頭部の成長により鼻咽腔が広くなり、閉鎖が不完全になる場合には、バルブの拡大が必要になる。拡大には軟性裏装材を添加して大きさを調節する。調整終了後、数日を経てレジンに置換する。

その逆に、機能訓練により咽頭括約筋群の動きが活発になり、収縮機能が向上すると、鼻咽腔が狭小化する。その場合は、バルブを削除・調整する必要がある。

9、顎矯正手術用サージカルスプリント


顎矯正手術は、下顎前突に代表される顎変形床に対して行われる観血的な外科手術である。  顎変形症の治療の流れ

①初診

②検査 頭部X線規格写真分析、歯列模型分析ほか

③診断 治療方針の決定

④術前矯正開始

⑤ペーパーサージェリー、モデルサージェリー

⑥サージカルスプリントの作製

⑦手術

⑧術後矯正

⑨保定

サージカルスプリントの目的

サージカルスプリントとは、手術中に分割した顎骨を固定・接合する際に、術前に想定した正しい咬合関係を容易に再現するためのガイドとなる装置である。特に、ミニプレートなど金属プレートを用いて顎骨を固定する場合、位置がずれることを防ぐ目的がある。さらに、術後一定期間サージカルスプリントを上下顎歯列間に介在することで顎間固定を行い、術前に想定された上下顎の咬合状態を維持し、安定を図る目的でも使用される。

10、カステロモラリス口蓋床


ダウン症候群とは

ダウン症は、精神発達遅延や先天性心疾患をはじめ低身長、肥満、低筋力、頚椎の不安定、眼疾患、難聴などを合併する。発生頻度は1000人に1人で、遺伝子疾患及び染色体異常な中では最も高い。

装置の目的

ダウン症児は舌及び口腔周囲筋の緊張が弱く、弛緩しているために、口唇閉鎖不全、舌突出などの症状を呈する。カステロモラリス口蓋床は、これらの症状に起因する吸綴・咀嚼・嚥下などの口腔機能障害を改善する目的で適用される。

装置の機能

①口唇閉鎖不全の改善 上唇部に機械的刺激を与えることで改善される。

②舌突出の改善 舌に機械的刺激を与えることで改善される。

いずれも持続的に機械的な刺激を与えることによって反射及び筋の運動を促す訓練になる。訓練開始は生後2年以内に装用すれば、抵抗なく受容され、刺激物に対して遊び感覚で触れることにより口腔周囲筋・舌筋群の運動が促進される。

装置の分類

形状から、乳歯萌出前に適用される無歯顎の場合と萌出後の有歯顎の場合とに分類される。

1)無歯顎の場合

口蓋床の唇側に直径4~5mmの半球状または波型の突起物を4~6個付与した形態とし、口蓋部に直径10mm程度の吸盤様突起または直径3~4mmの可動性ビーズ状形態

を付与し刺激体とする。

2)有歯顎の場合

口蓋床の前歯部口腔前庭に沿って0,7mmの矯正用ワイヤーを屈曲し、これに直径3~4mmの可動性もしくは非可動性ビーズ状形態を4~6個付与する。無歯顎の場合と同様、口蓋部に直径10mm程度の吸盤様突起または直径3~4mmの可動性ビーズ状形態を付与する。アダムスクラスプまたは単純鈎などで維持を図る。

注意点

装用時間は日中午前と午後1時間ずつを目安とする。

同一形態のカステロモラリス口蓋床を連続して装着していると、慣れによれ刺激性が低下してやがて改善効果が期待できなくなる。

顎骨の成長や歯の萌出に伴い、不適合となるので、刺激体の位置や形態を変えながら適宜作り替えていく必要がある。

11、人工頭蓋インプラント


頭部外傷、脳神経外科手術後の感染及び外減圧術の結果として生じる頭蓋骨欠損に対

し、脳の保護ならびに審美性の改善を目的とした頭蓋形成術が行われる。その欠損部を補うために人工頭蓋インプラントが用いられる。これには、レジン、ハイドロキシアパタイト、アルミナセラミックス、チタンなどを用いて作られる。

参考文献


・吉田松雄 関三千男 山口能正 田中清志 杉田順弘 森下裕司 阿部弘 正岡伸二 鈴木弥佐 佐々木明美 田中春樹 岡山保美 [編] 口腔顔面技工、実習帳

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