2016年5月5日木曜日

平成27年度 修士論文:3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法の有用性評価の審査結果要旨 B3DM1007

              平成27年度

修士論文審査結果要旨

学籍番号 B3DM1007 氏名 高田 朝

3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法の有用性評価

 ロストワックス法による歯科用鋳造は、歯科技工において汎用される金属等の加工技術である。近年、光学印象法やCAD/CAM 法などデジタル・デンティストリー関連の技術革新や実用化の進展が目覚しく、歯科技工現場への導入が進んでいるが、CAD/CAM 法による直接加工に適した歯科用材料は未だ種類に乏しい。このため、CAD/CAM 法により焼却可能な材料を用いて原型を製作し、ロストワックス鋳造法により歯科用合金やキャスタブルセラミックスに置換する手法の実用化が望まれてきた。しかしながら、これまでCAD/CAM 法との併用が試みられた原型材料は、原型の熱消失時の熱膨張による鋳型の型割れや、消失残渣による鋳造体の品位低下などの問題があり、実用に耐えるものではなかった。
 本研究は、2官能ウレタンメタクリレートオリゴマー、もしくは2官能メタクリレートオリゴマーに、それぞれ希釈用2官能性メタクリレートモノマーおよび合成用ワックスを添加した2種類の紫外線硬化性樹脂(イタリア、DWSシステムズ社製、RF080およびRF077レジン)を原型材に用いて CAD/CAM 法により原型を製作し、ロストワックス鋳造法により得た鋳造体の寸法精度と表面粗さを、インレーワックスならびにパターン用レジンを原型材に用いて得た鋳造体と比較、検討したものである。2種の光硬化性樹脂材料は、液槽光重合方式の3Dプリンタによる造形用途に開発されたもので、とくに熱消失性の改善が図られている。本研究では、これら樹脂材料と従来からの2種類の原型材で製作した原型(直径1.5mm、高さ10mmの円柱、および縦横5.0mm、高さ1.0mmの直方体)を、3種の埋没材、2種の加熱条件で遠心鋳造し、実習用銅亜鉛合金(GC社、Kメタル)の鋳造体を得ている。また、寸法精度は円柱状原型とその鋳造体の上部および下部の直径の変化に基づいて算出し、表面粗さは直方体原型からの鋳造体表面3箇所の中心線平均粗さと、鋳造体表面の500倍のSEM像の観察に基づいて評価している。
  本研究より、2官能ウレタンメタクリレートオリゴマー、希釈用2官能性メタクリレートモノマーおよび合成用ワックスを成分とする原型材(RF080)を液槽光重合方式3Dプリンタ技術にて加工し、専用急速加熱型石膏系埋没材と従来加熱法の条件で鋳造した鋳造体の成績が、寸法変化率1.74%、表面粗さ0.76 μmと、インレーワックス(それぞれ 1.78%、0.76 μm)およびパターン用レジン(1.61%、0.99 μm)に比肩し、臨床上満足できるものであることが明らかとなった。
 以上、本研究は CAD/CAM 法による歯科技工技術の進歩に重大な寄与を果たしたと評価される。よって、本論文は修士(歯学)の学位に相応しいものと判断する。

3Dプリンタ技術とロストワックス鋳造法

歯列矯正用 バイトアップ スプリント Bite up splint for orthodontics

スプリント・2mm挙上

スプリント・2mm挙上

スプリント・咬合面観;スプリントはセメント合着する

使用材料(Materials)


 パラフィンワックス(1.5mm)、シートワックス(0.5mm)、ワセリン、塩、普通石膏、レジン分離材、即時重合レジン、湿式加圧重合機、研磨器具

製作方法(Method of fabrication)

  1.  スプリントの外形線を記入する。(サベイライン上とする)
  2. 0.5mmのシートワックスと1.5mmのパラフィンワックスを使用してワックスアップする。
  3.  作業模型にワセリンを塗布する。
  4.  普通石膏でワックス原型の石膏インデックスを作製する。石膏を水と練和する際、硬化促進のため塩を少量加える。
  5.  作製した石膏インデックスと作業模型にレジン分離材を塗布する。
  6.  練和した即時重合レジンを石膏インデックスに満たし、作業模型にレジンを圧接する。
  7. 湿式加圧重合機で重合する。この時、加熱しない。
  8. 形態修正、研磨を行う。
  9.  超音波洗浄を行い、完成。

考察(Discussion)

1.石膏インデックスの作製について

  通常、シリコンパテを用いて、インデックスを作製する。しかし、今回は、普通石膏を用いてインデックスを作製した。石膏を用いる利点は、ワックス原型の厚みの再現性が良いことと、材料費が安価であることである。シリコンパテは弾性があるため、レジン圧接時に過加圧 によりワックス原型の再現性が悪くなることがある。

咬合回復用 スプリント Splint for occlusal recovery

咬合回復用スプリント・咬合面観

咬合回復用スプリント・頬側面観

スタディモデル・咬合回復前

使用材料(Materials)

 インレーワックス、ワックスシェルモールド、分離材、シリコンパテ、歯冠色即時重合レジン、湿式加圧重合機、ダッペングラス

製作方法(Method of fabrication)

  1. 理想的な仮想咬合平面を基準にして、ワックスアップを行う。(対合歯はデンチャー)
  2. シリコンパテでインデックスを作製する。
  3. 練和した歯冠色即時重合レジンをシリコンインデックスに満たし、作業模型に圧接する。
  4. 湿式加圧重合機で加圧重合する。この時、加熱はしない。
  5. レーズで鏡面研磨する。
  6. 超音波洗浄を行い、完成。

考察(スプリントの形態について) 

 スプリントは、仮想咬合平面と一致させたブロック形状で良いと考えられが、今回は審美性を重視して歯冠形態とした。歯冠形態は、ワックスシェルモールドに溶かしたワックスを流し込み、作製した。このワックスシェルモールド法は、彫刻法と比べて、簡便で短時間で作製可能である。

2016年5月1日日曜日

診断用 インプラント ステント Implant stent for diagnosis


術前診断用インプラントステント 咬合面観

術前診断用インプラントステント 頬側面観

使用材料(Materials)

  ユニティー咬合器、普通石膏、サベイヤー、パラフィンワックス、(人工歯)、石膏分離材、レジン分離材、埋没用石膏、FRPフラスコ、油圧プレ ス、MMA(メチルメタクリレート)(液)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)(粉)、ポリエチレンフィルム、給湯器、鉗子、咬合紙、クリア色即時重 合レジン、ガッタパーチャ、技工用バー、技工用研磨器具一式、レーズ研磨用具一式。

 製作方法(Method of fabrication)

  1. 作業模型を、スプリットキャスト法で咬合器装着する。 
  2. 作業模型をサベイングする。着脱方向は仮想咬合平面に対し垂直とする。 
  3. 普通石膏かシリコンを使用して、模型のアンダーカット部をブロックアウトをする。 
  4. ワックスアップする。インプラント埋入予定の部位は、理想的な歯冠形態とする。 
  5. レジンキャスト法で、ワックス部を透明色義歯床用レジンに置換する。 
  6. 仮想インプラント埋入方向にラウンドバーで穴を掘り、ガッタパーチャをいれて、透明の即時重合レジンで蓋をする。 
  7. 咬合器にリマウント後、咬合調整する。 
  8. 鏡面研磨、超音波洗浄をして完成。変形防止のため、作業模型にはめたまま、水中保管する。 

設計、サベイング、ブロックアウト

クリアランスの確認


ステントのワックスアップ(レジン歯を使用)


ステントのワックスアップ・頬側面観



固定性‐ 3本ブリッジ 下顎第二小臼歯‐下顎第一大臼歯欠損‐下顎第二大臼歯 Fixed three unit bridge

3本ブリッジ 咬合面観

船底型ポンティック‐ブリッジ 頬側面観

船底型ポンティック‐ブリッジ 舌側面観

船底型ポンティック‐ブリッジ・咬合状態 頬側面観

船底型ポンティックとは

粘膜と線あるいは点で接触させるポンティックの形態。粘膜とポンティックが接触し、咬合時に粘膜に機械的刺激が加わることで、粘膜の退縮を防ぐことができるといわれている。

使用材料(Materials)

 金銀パラジウム合金、インレーワックス、ワックス分離材、石膏系埋没材、鋳造リング、キャスティングライナー、水、電気炉、鋳造機、研磨器具、切削器具

製作方法(Method of fabrication)

  1. 理想的な形態にワックスアップする。
  2. ポンティック部を船底型に形態修正する。
  3. 連結部を凸面にする。
  4. マージン調整する。
  5. パターンレジンで連結する。
  6. ワックスの応力緩和とレジンを重合促進させる。
  7. 直径2.6mmのスプルーを非機能咬頭部に植立する。
  8. 直径3.2mmのスプルーワックスで、湯流れ部を形成する。
  9. 円錐台にワックスパターンを植立する。
  10. 埋没、鋳造する。
  11. 割り出し、スプルーカットを行う。
  12. マージン部の研磨と、内面調整を行う。
  13. 隣接面のコンタクト調整および咬合調整を行う。
  14. 鏡面研磨を行う。
  15. 超音波洗浄して、完成。

理想的なワックスアップ・頬側面観

理想的なワックスアップ・舌側面観

金銀パラジウム合金‐真空加圧鋳造方式‐ブリッジ鋳造体

  考察(スプルー植立について)

 鋳造リングの中央部に、クラウンパターンが位置しないように設定する。鋳造リング中央は、最も温度が高い位置であり、金属の最終凝固部となる。そのため、そこには鋳造欠陥(巣など)が集中するといわれている。従って、鋳造リング中央に押湯が位置するようにスプルー植立を行うべきである。
  

2016年4月30日土曜日

固定性- 3本ブリッジ 下顎第二小臼歯- 下顎第一大臼歯近心根欠損- 下顎第一大臼歯遠心根残根 Fixed three unit bridge mandibular second premolar- losted mandibular first molar mesial root- mandibular first molar distal root

3本ブリッジ(咬合面観)

3本ブリッジ(頬側面観)

完全自浄型固定性3本ブリッジ(下顎第二小臼歯部がアンレー形成、下顎第一大臼歯部が遠心根支台)

使用材料(Materials)

 金銀パラジウム合金、インレーワックス、ワックス分離材、石膏系埋没材、鋳造リング、キャスティングライナー、水、電気炉、鋳造機、研磨器具、切削器具

製作方法(Method of fabrication)

  1. アンレー部をワックアップする。
  2. 第一大臼歯部をワックスアップする。
  3. ポンティック部を完全自浄型に形態修正する。
  4.  連結部を凸面にする。
  5. マージン調整する。
  6. パターンレジンで連結する。
  7. ワックスの応力緩和とレジンを重合促進させる。
  8. 直径2.6mmのスプルーを非機能咬頭部に植立する。
  9. 直径3.2mmのスプルーワックスで、湯流れ部を形成する。
  10. 円錐台にワックスパターンを植立する。
  11. 埋没、鋳造する。
  12. 割り出し、スプルーカットを行う。
  13. マージン部の研磨と、内面調整を行う。
  14. 隣接面のコンタクト調整および咬合調整を行う。
  15. 鏡面研磨を行う。
  16. 超音波洗浄して、完成。

  考察(ブリッジの形態について)

 ポンティック部の頬舌径は、狭めず、歯列に調和させる。頬舌径を狭めると、舌の部分的な肥大化が起こるといわれている。
 連結部やポンティック基底面に、凹面を設けてはいけない。また、鋳造修復物表面に鋳造欠陥(巣)があった場合、除去して滑沢にする。
  

2016年2月7日日曜日

歯科用金銀パラジウム合金の特性&フルキャスト クラウン(小臼歯部) Full cast crown made of dental gold-silver-palladium alloys (Premolar region). characteristics of dental gold-silver-palladium alloys

小臼歯部のクラウン




歯科用金銀パラジウム合金の特性

 鋳造用金銀パラジウム合金の組成(重量%)と性質 (福井壽男.金属 2007;77:170より)

  • 金:12、銀:55、パラジウム:20、銅:10、その他:3
→硬さ(Hv)、硬化ー軟化(190ー120)
→伸び(%)、硬化ー軟化(5-20)
→強さ(MPa)、硬化ー軟化(816-530)
  • 金:12、銀:51、パラジウム:20、銅:14.5、その他:2.5
→硬さ(Hv)、硬化ー軟化(270ー145)
→伸び(%)、硬化ー軟化(4-19)
→強さ(MPa)、硬化ー軟化(884-510)
  •  金:12、銀:46、パラジウム:20、銅:20、その他:2
→硬さ(Hv)、硬化ー軟化(280ー148)
→伸び(%)、硬化ー軟化(3-28)
→強さ(MPa)、硬化ー軟化(836-520)

鋳造用金合金と鋳造用金銀パラジウム合金の組成(重量%)と性質(時効処理材) (福井壽男.金属 2007;77:170より)

  •  金合金(PGA-2,石福金属興業) 
金:68、白金:5、パラジウム:2、銅:15、銀:10、その他:0

→硬さ(Hv)、270[7.5]
→伸び(%)、26[5.0]
→引張り強さ(MPa)、850[7.3]
→降伏強さ(MPa)、 730[4.5]

  •  金銀パラジウム合金(S-12,石福金属興業) 
金:12、白金:なし、パラジウム:20、銅:14.5、銀:51、その他:2.5

→硬さ(Hv)、285[6.0]
→伸び(%)、15.3[4.0]
→引張り強さ(MPa)、900[8.1]
→降伏強さ(MPa)、 790[5.2]


※850度の溶体化処理を行うことで、金銀パラジウム合金は、クラスプに必要な把持力と耐久性が得られる。しかし、臨床現場ではアズキャストのまま使用しているのが実情である。アズキャストのままだと、 クラスプが破断するトラブルが起こりやすい。

金銀パラジウムの価格(参考) 

30g:40,000円→1g:1333円
30g:35.000円→1g:1166円
30g:30,000円→1g:1000円

金銀パラジウム製技工物の重量(参考)

インレー:約0.5~1g
レジン前装冠のフレーム:約1g
小臼歯部クラウン:約1.5g
大臼歯クラウン:約2.0~3g
3本ブリッジ:約6g
クラスプ:約1.0g

※スプルーカット分の消費や押湯の分は含まない

参考文献

福井壽男.歯科用金銀パラジウム合金の歴史と本合金の特性.歯科理工学会誌 2015. 34(3): 211-215.