咬合採得の情報を元に人工歯を配列した状態 |
蝋義歯とは? (What's an application of wax model ?)
咬合採得後、咬合器装着が完了して、人工歯配列と歯肉形成が完了した段階のものをろう義歯という。使用材料(Materials)
電気式ワックス形成器、人工歯、トーチ、デンタルメジャー製作方法(Method of fabrication)
0.切歯指導釘を1mm挙上する。1.上顎の前歯部を、咬合採得後の咬合床を参考にして配列する
2.下顎の前歯部を、垂直被蓋1mm、水平被蓋3mm 設定で配列する
3.下顎の臼歯部を、パウンドラインを基準に配列する。人工歯の湾曲は説明書に従い付与する
4.上顎の臼歯部を、下顎の人工歯に噛ませて配列する
5.デンタルメジャーを用いて、歯列のアーチを左右対称になるように微調整する
6.歯肉形成する
7.咬合調整して完成
上顎のろう義歯 |
下顎のろう義歯 |
今回、前歯部は切歯乳頭から20mm前方で配列している(通常7~9mm) |
考察(Discussion)
1.人工歯配列について
今回、担当歯科医師の指示の元、切歯乳頭から22mm前方に、ろう堤のアーチを設定して咬合床を製作した。(通常は切歯乳頭から7~9mm前方にアーチを設定する)咬合採得を行った結果、切歯乳頭から20mm前方に前歯の人工歯を配列することとなった。そのため、上図のように、前方に突出した義歯の形態となっている。
患者は事故で顔面を骨折して顔が凹んだ形態になっており、このろう義歯を患者に試適すると、この設計で顔貌の回復がなされていた。
また、上下の義歯は咬合で安定していた。
2. 3Dプリンタ技術(付加製造技術)を利用した義歯の製作について
2015年にDWSシステムズ社(イタリア、ビチェンツァ)が、義歯床製作のための光造形用軟性樹脂および、テンポラリークラウン製作のための光造形用樹脂をイタリアで発売している。(2016年1月現在、日本では未発売、未認可)製作方法は2つ考えられる。1つは、咬合採得した状態の模型の情報(咬合機装着後の情報)を3Dスキャンして、3Dモデリングソフト(3D CAD)で 人工歯配列および歯肉形成を行う。その後、人工歯部分のみおよび、人工歯肉部分のみに分割してそれぞれSTLデータ化する。人工歯部は歯冠用3Dプリンタ用樹脂で造形する。人工粘膜部は義歯床用3Dプリンタ用樹脂で造形する。その後、人口粘膜部に、人工歯を接着して、研磨して完成という流れである。(造形した人工歯がはまるように、人口粘膜部に凹状のくぼみが形成されている)
2つめは、従来法でろう義歯を製作、試適後、ろう義歯を3Dスキャンする。次に、 人工歯部分のみおよび、人工歯肉部分のみに分割してそれぞれSTLデータ化する。人工歯部は歯冠用3Dプリンタ用樹脂で造形する。人工粘膜部は義歯床用3Dプリンタ用樹脂で造形する。その後、人口粘膜部に、人工歯を接着して、研磨して完成という流れである。上記の製作法を、リバースエンジニアリングという
CAD/CAMミリング法で義歯を製作する方法もあるが、粘膜面のアンダーカット部を再現できるか等、不明な点が多い。
上記の製作法が普及されることで、キャスティング重合法を用いた義歯製作法がなくなる可能性がある。キャスティング重合法は、ろう義歯埋没、脱ろう、石膏型の乾燥、レジン分離材塗布、レジンの液と粉の混和、石膏型にレジンの填入および脱泡(加圧)、加熱重合(お湯で重合かマイクロウェーブ重合)、重合後に自然放冷、レジンの応力緩和、石膏型から重合後の義歯の割り出し、石膏溶解材でレジンに付着した石膏の除去、バリ取り、形態、咬合調整、研磨という製作工程である。キャスティング重合法は、上記のとおり、煩雑で多くの工程を要する。また、脱ろう時のやけどの危険、レジン混和時にモノマーを吸引すること、石膏から義歯を割り出す際に義歯を割ってしまう危険などがある。加えて、作業時間もそれぞれ、ろう義歯埋没に60から80分、脱ろうに10分、石膏型の乾燥に30分、レジン分離材の塗布に5分、レジンの混和に20分、レジン填入に20分、レジン重合に3分から60分、放冷および応力緩和に1時間から24時間、石膏型からの割り出しに20分から60分、石膏の溶解に30分から60分、バリ取り、形態修正、に30分、咬合調整に60分、研磨に60分要する。合計で、最長465分(31時間45分)要する。(未熟な歯科技工士が作業して、重合法も湿式加熱重合を選択、応力緩和を24時間した場合)また、石膏等、廃棄物が多くでる。
今後、3Dプリンタ技術が進歩し普及することで、上記のような複雑で時間が掛かり、火傷など怪我の恐れのあり、熟練を要する作業を行わなくてもよくなる可能性がある。新しい製作法を広めるためには、義歯の製作法別の製作コスト、作業時間、適合精度、機械的性質を評価して世間に発信していく必要がある。
関連リンク(Related links)
DWSシステムズ社www.dwssystems.com
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