2016年9月7日水曜日

歯科用3Dプリンタ (液槽光重合方式;バスタブ式) 3D printer for dental use

歯科技工用3Dプリンタシステム:3Dプリンタ、3D CAD、3D スキャナ

キーワード:3Dプリンタ、付加製造技術、液槽光重合方式、3Dスキャナ、3D CAD、3Dモデリングソフト、光造形、サポート、レジン、光硬化性樹脂、ロストワックス、テンポラリークラウン、歯列模型、作業模型、サージカルガイド、デジタルデンティストリー、造形用データ作成ソフト

歯科用3Dプリンタシステムとは? (What's 3D printer systems ?)

 3Dプリンタ、3DCAD、3Dスキャナで構成される。作業工程は次のとおりである。
  1. 3Dスキャナで、チェアサイドで直接デジタル印象採得を行うか、従来印象法で製作した作業模型をラボサイド3Dスキャナで3Dスキャンを行う。
  2. 3Dスキャンデータの容量を減らすなど、データの補正を行った後にSTLデータとして出力(エクスポート)する。
  3. 3DCADソフト上でSTLデータをインポートして歯科修復物などをデザインする。
  4.  デジタル修復物のデータをSTLデータとして保存する。
  5. 3DプリンタをCAMとした場合、専用の造形データ作成ソフトでサポート材の本数、太さを設定する。さらに、修復物の造形方向も設定する。(この操作も一定の経験を要する。この設定を誤ると造形不良が生じる)
  6. 別の造形データ作成ソフトで、プラットホーム(造形するための土台)内での造形場所の設定、データの拡大縮小補正(造形物の形状や、使用する樹脂によって補正値が異なる→一定の経験が必要を要する)、デジタル修復物データのスライスデータ(スライスの厚みを設定;10μmから70μm)の作成を行う。
  7. 汚染されていないレジンタンクに使用する3Dプリンタ用レジンを流し込み、3Dプリンタ機にセットする。この時、3Dプリンタ機のガラス板も汚染していないか確認する。レジンタンクとガラス板が汚染されていると、造形不良が生じる。
  8. 造形スタートする。
  9. 造形完了後、無水エタノールで造形物とプラットホームを洗浄する。
  10. 造形物を後重合処理(Post curing treatment)する。後重合処理とは、UV照射、オーブン加熱、熱湯に浸漬およびマイクロウェーブ照射のことをいう。
  11. 後重合後、プラットホームから造形物を取り出す。 
 

ロストワックス法に使用する原型を製作するまでの流れ


従来法でワックスパターンを製作した際の作業時間(目安)

 

3Dプリンタシステムを利用した際の作業時間(目安)

 シングルクラウンを1つワックスアップする場合、従来法で製作したほうが安くて速く原型を製作できる。具体的には、卒後3年以上の歯科技工士は10分程度で原型が製作できる。一方で、この3Dプリンタは50μm積層ピッチ設定でシングルクラウンを1つ造形するのに50分程度要する(造形だけの時間)。
※材料費は、シングルクラウン一つ分のインレーワックスが約5円で、特許切れ前の3Dプリンタ用樹脂が約50円となる。
 ※シングルクラウン原型を1日で30以上製作する場合、この3Dプリンタシステムを利用することで、生産性を上げることができる。具体的な方法は、夕方までに3Dモデリングソフトで30個以上のクラウンをデジタルワックスアップし、積層ピッチの細かい(10~30μm)造形用データを作成する。次に、3Dプリンタで造形を開始して帰宅する。そして、次の日に造形物の洗浄、調整、研磨を行い、ロストワックス法で金属やプレスセラミックスに置換する。というものである。3DプリンタなどのCAD/CAM システムは、夜間運転で物づくりができることが利点である。  

 ※3Dプリンタ機の洗浄が最も手間がかかる工程である。造形完了後、レジンタンク内の余った3Dプリンタ用樹脂の回収作業、レジンタンクの洗浄、プラットホームの洗浄、3Dプリンタ機のガラス板の洗浄作業がある。液状の樹脂がレジンタンク、プラットホームに残留し、ベタベタな状態である。これを、無水エタノールで洗浄する。また、3Dプリンタ機のガラス板にも液状樹脂が付着している時があるので、これも無水エタノールで拭き取る。レジンの付着物などでガラス板が曇ったままだと、造形不良が生じる。 

※本3Dプリンタ(液槽光重合方式)の消耗品は、レジンタンク、無水エタノールおよび3Dプリンタ用光硬化性レジンである。価格は、レジンタンクが約2万円、無水エタノールが500mlで約2000円、3Dプリンタ用光硬化性レジンが7万4千円から30万円である。溝付きプラットホームを使用する場合は、スチームクリーナーも用意したほうがプラットホームの洗浄の際に効率的に洗浄できる。

液槽光重合方式の3Dプリンタおよび造形物など


レジンタンクに光硬化性樹脂をセットしている様子

3Dプリンタにレジンタンクをセットして造形している様子。プラットホーム、レジンタンク、液状レジン、レーザー装置で構成される。

造形中の様子。本装置は吊り下げ方式であるため、プラットホームが上にある。吊り下げ方式は、レジンの節約ができるメリットがある。デメリットは、造形物が落下してしまうことがあることである。

造形物(ロストワックス用)

造形物(テンポラリークラウン、ブリッジ)

造形物(作業模型)


造形物と修復物(ロストワックス)


ロストワックス用造形物



ロストワックス用造形物

クラウン製作のデジタルデータ

クラウン造形物データ。コーン状のものをサポート、サポート下の板はプレートという。

3Dプリンタで製作したレジンプリッジ

レジンブリッジを3Dプリンタで製作している様子

※2016年度の段階で、日本ではテンポラリークラウン用3Dプリンタ樹脂は使用できない。サージカルガイド用3Dプリンタ用樹脂も使用できない。上記のレジンは、1リットル30万円と高価である。ロストワックス用加熱消失3Dプリンタ用樹脂、模型用樹脂が日本で使用可能である。
イタリアでは、テンポリス(プロビジョナルレストレーション用3Dプリンタ樹脂)が既に臨床応用されている。50gで10万円である。1gで2000円、大臼歯模擬クラウン(筒状)が0.7gなので、1400円である。保健適用のCAD/CAMレジンブロックは3000円から4000円であるから、CAD/CAM冠より経済的である。