2016年7月23日土曜日

液槽光重合方式の3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法の有用性評価 Evaluation for the usefulness of a new lost-wax casting process using additive manufacturing technology (3D printer)

液槽光重合方式の3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法の有用性評価

歯科領域での3Dスキャナや3Dプリンタなどが開発されているが、2015年の時点で製作精度評価などの詳細な検討がなされていないのが現状である。

加熱消失性の優れた3Dプリンタ用光硬化性樹脂を用いてレジンパターンを造形し、歯科精密鋳造(ロストワックス)法に応用した。そして、鋳造物の寸法精度と表面粗さを評価した。

3Dプリンタ技術が歯科業界に普及することで、歯科技工物の生産性向上および一定品質化が図られる。さらに、熟練歯科技工士の減少にも対応できると考えられる。

インレーワックス、パターンレジン、3Dプリンタ用樹脂を使用して、ロストワックス法用の原型(ワックス/レジンパターン)を製作した。そして、6つの鋳型製作条件(石膏系、リン酸塩系、新規レジンパターン専用石膏系埋没材×従来加熱または急速加熱)で鋳型を作製し、遠心鋳造にて鋳造体を作製した。

デジタルマイクロメータを使用して試料の寸法を測定し鋳造体の寸法精度を評価した。また、非接触式表面粗さ計測器で鋳造体の表面粗さを測定した。統計解析は、サンプル数5として、一元配置分散分析およびTukeyの方法で解析した。統計学的有意水準は5%に設定した。

全ての条件において、原型の寸法より1~4%程度(1%=15μm、4%=60μm)大きい鋳造体が得られた。

新規石膏系埋没材とRF080郡の組み合わせが、1.59%と、最も寸法精度の良い結果となった。

算術平均粗さ(Ra)は、石膏系埋没材と従来加熱法の組み合わせた条件のインレーワックス群が0.48μmと最も小さい値を示した。ほかの条件は、0.5から1.0μm程度の値を示した。

新規石膏系埋没材の条件は、原型材料の4条件ともRa=0.7から1.0μm程度の値を示した。

SEMで鋳造体表面を観察したところ、石膏系埋没材と従来加熱法の組み合わせで、インレーワックス群が最も表面性状が優れていた。ほかの条件はすべて似た様な表面性状であった。

3Dプリンタで造形した物を、ロストワックス法に応用する方法が、コストや修復物の製作精度保障の観点から歯科領域で受け入れやすいものであると考えられる。

寸法精度は、新規石膏系埋没材とRF080レジンを組み合わせたものが、従来法と同等のものが得られた。

表面粗さは、Ra=0.4から1.0μmの精度であった。これは、細かいペーパーコーンあるいは、茶色のシリコンポイントを使用して研磨が開始できる程度の粗さである。液槽光重合方式の3Dプリンタは、使用する樹脂を変更するだけで、1台の3Dプリンタで歯列模型、テンポラリークラウン、ロストワックス原型、サージカルガイド、などが製作できる。(日本では直接口腔内に入れることはできない)

液槽光重合方式の3Dプリンタ技術を利用した新しいロストワックス鋳造法は臨床的に有用であることが示唆された。

参考文献

参考文献

参考文献

図のタイトル

鋳型の製作条件

寸法変化率のグラフ

寸法変化率のグラフ

表面粗さのグラフ

表面粗さのグラフ

鋳造体表面のSEM像

鋳造体表面のSEM像


キーワード
 3Dプリンタ、付加製造技術、液槽光重合方式、ロストワックス法、鋳造体、寸法変化率、表面粗さ、DWS systems、加熱消失性、CAD/CAM、3Dスキャナ、3D CAD、歯科技工作業のデジタル化、SEM、デジタルマイクロメータ